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腸内細菌によって便の質や色が変わる

私たちの腸の中には「腸内細菌」と呼ばれるバクテリアがすみ着いていることは、もう多くの方がご存じかと思います。その数はおよそ100種類、100兆個。人の体には60兆個の細胞があるといわれますが、それをはるかにしのぐ膨大な数です。これらの腸内細菌を全部集めると重さにして100~500g にもなるといわれています。数や重さだけではややイメージするのは大変ですが、スゴイ、量・数です。

そもそも、私が最初に腸内細菌をこの目で見たのは、今から50年前のことでした。汚い話で恐縮ですが、自分のウンチを培養して、顕微鏡でのぞいたのです。便の中にはたくさんの生きた腸内細菌が含まれています。なにしろ、「自然界で最も濃厚細菌の固まり」ともいわれるくらいですからね。しかし、当時の技術では、それらの菌をうまく培養することができなかったため、便の中の菌は既に死んでいると考えられていました。

そこで私は海外の文献を参考にして、独自の培養法を考案し、まず自分の便で調べてみたわけです。すると顕微鏡でのぞいたときに、増殖したビフィズス菌をはじめ大量の嫌気性菌が見つかった。あの時の興奮と感動は、今でもはっきり覚えていますよ。

以来、腸内細菌研究は私のライフワークとなりました。今では腸内細菌のこともずいぶん解明され、私たちの健康維持に重要な役割を果たしていることがわかっています。
ガンや生活習慣病などが治るのもこの腸内細菌による免疫力によるところが大きいのです。

例えば、ビフィズス菌や乳酸菌といった腸内細菌は、ヨーグルトや健康飲料でおなじみですね。

腸内には様々な細菌がすみ着いていますが、これらは私たち人間にとって有用に働くか、有害に働くかで、大きく2つのタイプに分けられます。健康維持に役立つ腸内細菌が「善玉菌」で、その代表は乳酸菌の一種、ビフィズス菌です。
一方、健康を害する細菌は「悪玉菌」で、ウェルシュ菌や大腸菌などが挙げられます。腸内には、

これらの善玉菌と悪玉菌が一定のバランスですみ着いており、このような細菌そうの集団を「腸内細菌叢」と呼んでいます。腸内細菌叢、つまり、どんな細菌がどんなバランスで腸内にすみ着いているかは、人によって違いますし、また年齢や健康状態によっても変化がでてきます。

例えば、生まれたばかりの赤ちゃんが最初に排せつする便(胎便)には、腸内細菌はほとんど存在しません。
しかし、そのわずか3、4時間後には腸内に大腸菌などが現れ、さらに授乳後は一気に細菌数が増えます。
そして生後3日日ごろになると、善玉菌のビフィズス菌が出現し始め、7日目辺りにはビフィズス菌が腸内細菌全体の95%以上を占めるようになります。

ビフィズス菌がこんなに多くなると、悪玉菌は繁殖しにくくなります。というのも、ビフィズス菌は乳酸や酪酸といった酸性の成分をつくりだすので腸内のPHが強い酸性に傾くからです。

これはヨーグルトの味が酸っぱいのと、同じ理屈です。悪玉菌は酸性が嫌いなので、そんな環境下では育つことができないのです。
赤ちゃんのお腹は、まさにビフィズス菌に守られているんですね。それにしても、このビフィズス菌はどこから腸に入ってくると思いますか。ビフィズス菌にも色々な種類がありますが、実は生まれた産院によって、その種類に違いがあることがわかりました。恐らく看護師の手や器具を通して、その産院に特有のビフーズス菌が赤ちゃんから赤ちゃんへと受け継がれているのです。

ただし、ビフィズス菌が9割以上も占めるような状態は、ずっと続くわけではありません。離乳食を食べ始めると15~20 % に減少し、代わりにバクテロイデスやユウバクテリウムなどの嫌気性菌が増えてきます。これらは悪玉菌の一種ですが、ビフィズス菌とバランス良く共生している限り、特に悪さはしません。いったん腸内にすみ着いた菌は他の菌と入れ替わることはまずないので、安定した共生関係は、その後、何十年も続くのが普通です。

ところが、このような腸内細菌叢に悪影響を及ぼすものがあります。それが加齢や食生活の乱れ、便秘、ストレスなどです。
これらの条件下に置かれると、腸内ではビフィズス菌が減って、悪玉菌の代表であるウエルシュ菌などが増えてきます。例えば、食生活の乱れやストレスなとで便秘になってしまうと、便の滞留時間が長くなり、ビフィズス菌の増殖にストップがかかります。すると乳酸や酢酸が減って、腸内の仰が酸性ではなくアルカリに傾きます。こうなると悪玉菌がどんどん増殖して、腸内は悪玉菌の天下になるわけですり善玉菌は腸内で「発酵」を進めますが、悪玉菌は「腐敗」を促進します。

この結果、アンモニアやアミン、インドールといった腐敗産物が作られ、その一部は体内に吸収されて全身を巡ることになります。便秘が続くと肌が荒れたり、頭痛や肩凝りが出てくる人がいますが、それは悪玉菌が産生する腐敗産物の仕業といえますり。
そういった状態が長期間続くと、有害物質を解毒する肝臓にも負担がかかりますし、高血圧やガンなどの生活習慣病や老化を促進することにもなります。

例えば米国の研究では、1週間に2回以下しか便通がない人に乳ガンが多かったと報告されています。また、ストレスのある人や痴ほう症の患者さんでも、悪玉菌が異常に増えていたことがわかっています1これとは逆に、健康で若々しい人は善玉菌が多く、悪玉菌が少ないといえます。

私たちは以前、長寿地域として有名ゆずりはらな沖縄県と山梨県桐原村(現・上野原村)の高齢者の腸内細菌叢を調べたことがあります。その結果、これらの地域の高齢者は、東京の高齢者に比べ、明らかに、明らかに善玉菌が多く、悪玉菌が少なかったのです。腸内の善玉菌を元気に保ち、悪玉菌の増殖を許さない。それが健康と若さを保つ大切なポイントなんですね。

では、あなたの腸内細菌叢は今、どんな状態でしょうか。それを知る一番簡単な方法が、毎日のウンチをチェックすることです。
「便りがないのは元気な証拠」などといいますが、便についてはまったく逆で、毎日定期的に「便り」が来ることが、元気な証拠です。ですから、お通じがないこと自体、善玉菌の危機を物語っているわけですね。また、お通じがあっても、それがどんな状態かが、とても重要です一。私は毎朝、朝食の20〜30分後にトイレに行きますが、その際、しっかり便を観察します。
チェックポイントは5つ。量、色、形、硬さ、においです。まず、色ですが、善玉菌のビフィズス菌が多いほど、腸内は酸性になるので、便の色も黄色色っぽくなります。

反対に、悪玉菌が増えて腸内がアルカリ性に傾くと、便の色は黒くなります。次に硬さは、硬からず軟らかすぎず、バナナの形をしているのが、良い状態ですね。もしカチカチ便やコロコロ便が出たら、悪玉菌優勢の証拠です。
コロコロ便は、ウサギの糞に似ていとふんるので兎糞と呼ばれますが、これはストレスが原因です。また、においですが、善玉菌が多い便なら、あまりにおいません。
逆に悪玉菌が多い場合は、強い悪臭となり、おならも臭くなります。先ほど申し上げたように、悪玉菌は腸内で腐敗産物を作りますから、それが悪臭の原因になるんですね。

最後に量ですが、日本人の1日の排便量は平均で150~200 gといわれています。バナナくらいの太さだと20~30cmですね。
食物繊維をたくさんとっている人なら40~50cm、300~400gは出ます。

ちなみに、芋類が主食のパプアニューギニアの先住民の排便量は1kgといいますから、大したものです。つまり、理想的なお通じとは、黄褐色で、においの少ない30 cmくらいのバナナ状の便がツルンと出てくる、という状態ですね。こういう便なら、善玉菌も元気で、腸そのものも健康といっていいでしょう。あなたも早速、今日からトイレでチェックしてみてください。

腸内細菌叢のバランスを良い状態に保つには、食生活がとても大切です。例えば肉食に偏ると、悪玉菌が増えることがわかっています。
一方、悪玉菌を抑え、善玉菌を元気にしてくれるのが、ヨーグルトや乳酸菌飲料、オリゴ糖、食物繊維などです。私はかれこれ40年ほど、ヨーグルトを毎日食べ続けていますが、おかげでカゼもほとんど引かず「いたって元気です。ヨーグルトには乳酸菌がたくさん入っています。これらの菌が腸内にすみ着くことはほとんどありませんが、腸に元からいるビフィズス菌の増殖をサポートしてくれます。
ヨーグルトには免疫力を高めたり、血中のコレステロールを下げる効果などもありますから、1日200gくらい食べるのがお薦めです。また、オリゴ糖はビフィズス菌の大好物ですから、こちらも腸内の自前のビフィズス菌を増やしてくれます。

加齢で体が老化したら、腸内環境の悪化は避けられないと思い込んでいましたが、そんなことはありませんでした。
例えば、病院で治療中の高齢者にオリゴ糖を2週間摂取してもらったところ、ビフィズス菌が約10倍も増えていました。腸が若返るチャンスは、何歳になってもあるということですね。オリゴ糖を多く含む食品の代表は、きな粉、ゴボウ、タマネギ、バナナなどです。

大きなタマネギなら、1個でオリゴ糖が5gほどとれます。最近は甘味料やサプリメントも市販されているので、それらを利用するのもいいでしょう。カイテキオリゴならレビュー数もたくさんあり参考になりそうです。

摂取量の目安は、1日3gです。ヨーグルトやオリゴ糖をとっても、お通じが今ひとつ改善しないという人もいるかもしれません。それは、食物繊維が不足しているからでしょう。

日本人の現在の食物繊維摂取量は平均で15gですが、スムーズな便通にするには1日20~25 gは欲しいところです。
食物繊維は消化されにくいので、便のカサを増やします。カサがあって便がゴツゴツしていると、腸が刺激されてぜん動運動が活発になり、排便のスピードアップにつながります。

ビフィズス菌は大腸の最初の所で増殖しますが、通過しているうちに少しずつ弱ってきます。だから、腸に便がとどまる時間が短いほどいいのです。
つまりビフィズス菌の増殖と食物繊維による便のスピードアップが合体したときこそが、お通じにとってベストな状態なんですね。腸は健康と若さを保つ基本。みなさんも腸内細菌の力を借りて、元気で若々しい毎日を送ってほしいものです。
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