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小脳には不要なものをはじくバリア機能がある

私たちのお腹の中に収まっている腸は、長さにして約7.5 mもあります。腸は、大きく小腸と大腸に分けられますが、このうち6 mもの長さがあるのが、小腸です。この小腸は長さだけでなく、面積もまた広大です。小腸表面には、絨毛と呼ばれるビロードのような突起がたくさんありますが、仮にこれらを広げたら、なんとテニスコート1面くらいになるんですよ。

しかし、これだけ広い組織ですが、小腸は大腸と違って、ガンのような重大な病気になることもありません。というのも、小腸の細胞は1〜3 日という極めて短いサイクルで生まれ変わっているため、ガンのように時間をかけて進行する病気にはなりえないんですね。

つまり、大腸ガンはあっても、小腸ガンはないわけです。体の中でもかなりユニークな組織といえますが、ここではどんなことが行われているのでしょうか。

小腸というと、摂取した食物を消化・吸収する働きがよく知られていますが、実はそれだけではなく、色々な機能があることがわかってきました。知れば知るほど、奥深い。それが小腸なのです。

私たちが口から食べた食物は、小腸に達すると、その広大な表面積を通して、急速に栄養素としてとり込まれます。しかし、来たものを何でもかんでも吸収するのではなく、ちゃんとより分けているんですね。体にとって有望な病原体や毒物にはストップをかけ、その侵入を許さない。

つまり、小腸は体にとって有害なもの、不必要なものは入れないというバリア(障壁)機能も果たしているのです。
そもそも小腸は、体の中でも最大の免疫器官だといわれています。病原体などを認識すると、抗体を作ってやっつけ、体を外敵から守っているんですね。
しかも、この免疫機構には、体のほかの場所では見られない「寛容」というシステムまで備わっています。どういうことかというと、たとえ体にとっては異物であっても、必要なものは温かく受けて入れるとい-つ懐の深さを持ち合わせているのです。口から摂取した色々な食物を異物と見なして、排除し、攻撃していたら、人間は生きていけませんね。だから、よほど変なものが入ってこない限り、受け入れるわけです。
このような免疫寛容のシステムが損なわれた結果、起こるのが、アトピーをはじめとする食物アレルギーなんですね。小腸の細胞では、特定の病原体などをチェックする見張り番のような働きがあることもわかってきました。腸の免疫は、単に自己と非自己(異物)を認識するだけでなく、もっと賢く、良いものと悪いものを判断しているといわれているのです。

このほか、小腸はアミノ酸やブドウ糖、脂肪などの栄養素が入ってくると、それを知らせるホルモンも出します。いわば「アミノ酸が来ましたよ」というシグナルを発して、体に情報を伝えているわけです。こうやって見てみると、腸はなぜこんなにも賢いのかと、驚かれるかもしれませんね。

実際、最近の免疫学の学会などでも、それはホットなテーマになっています。腸の神経系は大脳に次いで大きく、また生物進化の過程から見ると、脳は腸から生まれたという説もあるほどです。

最近は特定保健用食品(トクホ)など、特別な機能を持った食品が数多く出ています。私が小腸の研究を始めたのは、このような食品が果たして小腸できちんと吸h収されているのだろうかという疑問が出発点でした。そうして研究を進めるうちに、食品成分が小腸に対し、色々な影響を及ぼすことがわかってきたのです。

例えばカルシウムは、胃酸の影響で弱酸性になっているペーハー小腸上部では吸収されやすいですが、小腸下部に行くとアルカリに傾くため、吸収されにくくなります。ところが、牛乳由来のあるペプチドをとると、弱アルカリの条件下でもカルシウムが溶けて、吸収されやすくなるんですね。また、クエン酸や乳酸、オリゴ糖なども、腸管内をを酸性にして、カルシウムの吸収を高めてくれます。

このように食品成分の働きに応じて、小腸内での栄養素の吸収が艮くなったり、あるいは阻害されるといった現象が起こってきます。もし阻害する方向に働く成分ならば、例えば血糖値の上昇を抑えるなどの目的で利用できるわけですね。実際、コレステロールや血圧、血糖値などを調節する食品の中には、小腸での消化・吸収を制御するメカニズムを持つものが少なくありません。小腸は、摂取した食べ物を巧みにより分けて、吸収したり、吸収しなかったりしながら、私たちの健康を内側から支えています。そして、そんな小腸の働きを左右しているのが、ほかならぬ食品であるということも、また興味深いものです。

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